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コンクリートの隙間から(エピローグ)

※ 小説カテゴリーです。コンクリートの隙間からの続編です。

「コンクリートの隙間から(5月12日)」を読んでいない方は、そちらを先に読んでくださいね。


Sirohana2










<花>

ねえ、僕たち、いつの間にか少し痩せたみたいだよ。

あれ、本当だね。

この前までは、雨から水を分けてもらったら、元気になっていたのにね。

そうだよね。

さっきまで、雨が振っていたはずだよ。

それなのに、どういうわけか元気が出ないね。

おかしいな。

根っこや葉っぱに、力が入らないや。

花も前みたいに、思いっきり花びらを広げられないよ。




そうそう、向こうに咲いていた僕たちの仲間は、いなくなったみたいだよ。

そうなんだ。

じゃあ、僕たちもいなくなってしまうのかな。

うん、そうかもしれないね。




あ、この前来てくれた人が、また来てくれたよ。

また、じっと僕たちを見ているよ。

僕たちと友達になりたいのかな。

でも、ごめんね。

僕たち、もう少しでいなくなっちゃうみたいなんだ。

あれ、この人、少し微笑んでいるみたい。

僕たちがいなくなるのが嬉しいのかな。

なんで微笑んでいるんだろう。

葉っぱに触ってくれているみたいだけど、ほとんど何も感じられないよ。

いなくなるってどういうことなんだろうね。

この人は分かっているのかな。

もし、知っているなら教えてほしいな。






<私>

私は、二階の部屋の窓から、空を眺めた。

昨日まで降っていた雨が嘘のように、空は晴れわたっていた。

空はただ水色で、どこにも行かずにそこにじっと留まっていた。

私は、視線を机の上のポトスに移す。

瑞々しささえ感じられるほどの緑色。

葉は、茎は、上に、横に生命のおもむくままに成長していた。




私は玄関先に咲いている白い花のことを思い出さないわけにはいかなかった。

このポトスとは対照的に、弱りきっている白い花のことを。

いや、今となっては白い花ですらない。

黄色くくすんだ花になっている。

その花を見ることを、私はここ数日、避けていた。

玄関を通過するときですら、見ないようにしていた。

一つの命が終わっていく姿は、ただ悲しいから。




でも、目の前のポトスが、その花を、見てくることを私に訴えかけているにように感じた。

「あなたは、見て来るべきなんだ」と。

そう感じたから、私は玄関に向かった。

向かわないわけにはいかなかった。

玄関先に咲く花を、じっと、眺めてみる。

やはり、相当弱りきっている。

私は、予想していた通りに悲しい気持ちになる。




しばらく、眺めていると、私はこの小さな生命が消える瞬間まで、この場にいたいと思った。

生命は時間が来れば、風船が破裂するみたいに、一瞬でなくなってしまう。

その瞬間を、この目で見たい。

そもそも、私は、なぜ、こんな玄関先に咲いた小さな花のことを気にしているんだろう。

私は、私が分からなくなる。

花が私に、語りかけてきた。

正確には、語りかけてきたような気がした。




「もうしばらくしたら、僕たちはいなくなるんだ。それは避けられないことなんだ」

花たちの決意のように聞こえる。

私は花に、語りかける。

「私もそうなのかな」

「もちろん」

「君たちはそれで、悲しくないの」

「悲しくないよ。だって、僕たちの子供たちは、きっとどこかでまた白い花を咲かせるからね」

「そうなんだ。でも、君たちはいなくなってしまうんだよ」

「・・・その通りだね。いなくなるよ。でも、繰り返すようだけど、これは避けられないことなんだよ。あなただって、そうなんだよ」

「うん」

「あなたは、自分自身がいなくなることが悲しいの?」

「どうかな。分からない」

「自分がいなくなることを受け入れてみて。そして、いなくなるその日まで生きればそれでいいんだ」

「そうかもしれないね」

私は、心の奥に暖かいものを感じる。

体のおもりがすっと消える感覚を持てた。

もしかしたら、少しだけ、笑顔になっていたのかも知れない。

今にも、ばらばらになってしまいそうな葉を触ってみる。

まだ、今は、生きている。

明日は生きているだろうか。

それは、分からない。

私にも、この小さな花にも。







コンクリートの隙間から (完)




以上です。

エピローグのくせに、前回より長いですね~。

まあ、いいでしょ。

本当は、前回の「コンクリートの隙間から」で、完了したつもりだったんですが、続きがどうしても書きたくなったの書きました。

もう、今度こそ続きはないと思います。

実は、「現在のうつ病生活」カテゴリーよりも、「小説」カテゴリーの方が書いた後、すっきりするんですよ。

なんででしょうね。

理由は分かりませんが、ともかくまた何か書くと思います。






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コメント

『小説』カテゴリー、かなり気に入ってますよ~♪
次は何かな?
楽しみにしてま~す!

投稿: hikaru | 2008年5月20日 (火) 16時57分

うん。いいです(^-^)

てことは、前回のは「プロローグ」だったんですね。

命のモチーフ。花も動物も人間もいつかは命が耐えるんですよね。幸い人間様は家族という表現の出来るつながりがあります。家族を大切に一秒でも長く一緒に居たいですよね。

投稿: とし | 2008年5月20日 (火) 17時09分

ぽとすさんの優しさがうまく表現できているなと
思いましたよcatface
小説を書く、その文章力があるって素晴らしいですね。
また、次回作を楽しみにしております。

投稿: あおぞら | 2008年5月20日 (火) 17時35分

始まりがあれば、終わりがある…。
でも、そこで終わるわけじゃなくて、また次の世代に受け継がれていくんですね。

私たち人間のことも、どこかで誰かがそうやって見ているかもしれませんね。

私が見つけたアスファルトに咲くペチュニアはどうなったかな?
また見にいってきますbud

投稿: ゆめ | 2008年5月20日 (火) 17時42分

命はいつかは終わっちゃいますよね。。
花も季節が変われば一変する・・。
でも、その花はぽとすさんに注目されて
幸せだったと思いますよ^-
(まだ死んでないと思いますが・・^^;)

投稿: ハピィぱぱ | 2008年5月20日 (火) 19時25分

おぉ!続編ですね。
何だか命について考えさせられるお話です。
素敵な感じに仕上がっておりますね。
ぽとすさんが小説の方書きたいのなら好きにするべきですよね。
ぽとすさんが落ち着くのが一番ですもの。
それにぽとすさんの小説もっと読みたいです〜。
ぽとすさんの小説は読んでいて心が温かくなりますね。
春みたいです。
本当に私には小説とかは書けないので羨ましい限りです。
また小説書いて下さいね。
それでは。

投稿: るりは | 2008年5月21日 (水) 00時58分

自分がいなくなることを受け入れてみて。そして、いなくなるその日まで生きればそれでいいんだ,,,

心にしみました。ありがとう。

今ある命に感謝して運命として命が終わる日まで、自分なりに懸命に生きる、それが使命だって思います。

投稿: J | 2008年5月21日 (水) 15時03分

小説カテゴリーはとても好きです。ぽとすさん自身も書くことが好きなこと伝わってきます。

投稿: たけかな | 2008年5月21日 (水) 17時44分

>hikaru さん

楽しみにしてくださってどうもありがとう~。
次は何書こうかな・・・
全然決めてないです。
思うがままに書いているだけなので(笑)

投稿: ぽとす | 2008年5月23日 (金) 10時27分

>としさん

そうですね、前回のがプロローグになりますね。
プロローグとエピローグのみの小説です。
ちょっとおかしいかな。

特に、命について書こう、という意識はなかったんです。
枯れかかった花を見て、何か書きたいなと思って、
思うがままに書いたものなので。

投稿: ぽとす | 2008年5月23日 (金) 10時31分

>あおぞらさん

優しいだなんて・・・
あおぞらさん、だまされてますよ。
僕は優しくないですよ(笑)

次回もよかったらお付き合いください~!

投稿: ぽとす | 2008年5月23日 (金) 10時33分

>ゆめさん

そうですね。
いのちが終わっても、ちゃんと次のいのちに
つながっていくんですよね。
植物や動物が体験した事や考えたことはちゃんと次の
いのちに継承されてるような気がします。

ゆめさんのペチュニアはどうだったでしょうか。

投稿: ぽとす | 2008年5月23日 (金) 10時35分

>ハピィぱぱさん

僕が、この花に注目したのは、たまたまです。
注目されてもしかしたら喜んでいるかもしれませんが、
植物はそんなことも関係なくしっかり生きていると思います。
ただ、生きているだけでいいんだ、思っているように、
僕には見えます。

ちゃんと、花はまだ生きているようです。
最近、暑いですから。
先々週までは元気だったんですけどね・・・

投稿: ぽとす | 2008年5月23日 (金) 10時38分

>るりはさん

春みたいですか。
秋、冬みたいなのもたぶん書けると思います。
でも、夏みたいなのはたぶん無理です。

読みたいだなんて言ってくださって、ほんとに
ありがたいことです。
素直に嬉しくなりました。

また、何か書きますね。

投稿: ぽとす | 2008年5月23日 (金) 10時41分

>Jさん

命が終わるまで、ただ生きる、そんなことを
この花は教えてくれました。
植物も、動物も同じ命なんですよね。
ただ、生きて死ぬだけなんです。
みんな同じです。

ちゃんと終わりがあるんです。
だからこそ、今ちゃんと生きればそれでOKなんだろうな、
と思います。

投稿: ぽとす | 2008年5月23日 (金) 10時44分

>たけかなさん

気に入ってくださって、どうもありがとう~!
そう言っていただけると、書きがいがあります。
誰からもコメントなくても書いてやると思ってましたが、
やっぱり読んでくれている人がいると嬉しいです。

投稿: ぽとす | 2008年5月23日 (金) 10時46分

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